レゲエニュース CH7(チャンネル7)

2004年から2007年まで、レッドホットなレゲエニュースをピックアップしていたch7。

Vol.017-020
「オレ流、Ricky Trooper」




もしあなたがRicky Trooper(以下、RT)の大ファンだとしても、そうでないとしても、彼がジャマイカのダンスホールの歴史にその名を刻んだことはまぎれもない事実である。
ご存知のとおり、彼は長い間、伝説的なサウンドシステム「Kilimanjaro」の顔であった。BadmanスタイルのMCや独特のセレクションなど、RTはサウンドクラッシュの勝ち負けに関わらず、90年代に大活躍をした。 彼がKilimanjaroを去って自らのサウンドシステム「Sound Trooper」を結成してからは、あまり目立つような活動はしていない。 その原因は、狭い世界であるダンスホール業界のエリートたちが彼を締め出しているからだと言う人もいれば、ただ単に彼はもう年だからだと言う人もいる。 RTは最近インタビューで、確かに自分の置かれている立場は変わったけどいい方向に変わったと話したそうだ。

「Sound Trooperを結成してからは以前より海外に行くことが多くなったよ。90年代はとにかく有名になろうと必死だった。 いろんなクラッシュとかに出たりしてがむしゃらだったよ。そして今はそれが実ってたくさんのお金を稼ぐことができるようになったんだ。 特にヨーロッパや日本にはよく呼ばれるよ。」

RTはジャマイカでのビッグダンスに出ることはもはやなくなった。平日に行われるストリートダンスにちらほら出る程度だ。 しかしこれはRT自らがあえて選んだ道だと言う。彼の音楽業界に対する姿勢は10年前とは大きく変わったらしい。
「時代は変わったんだよ。ジャマイカでビッグダンスに出ないで、田舎のダンスに出ることが多いのは、俺は自分のイメージを大事にしているからさ。 なんでもかんでも沢山のダンスに出りゃいいってもんじゃないんだ。「Ricky Trooper」という名前は俺と俺の家族を養うための「看板」だから、大事にしないといけないんだ。 本当に俺のダンスに来たいって思ってくれてる人たちのためにやる、それが俺のビジネスのやり方だ。」 俺流、Ricky Trooperはこう語ったそうだ。
彼の長年に渡ってのライバル、Tony MatterhornとFirelinksは今、大成功を収めている。 MatterhornはFirelinksと共にキングストン内外でダンスをキープし、ビッグマネーを稼いでいるようだ。
このような成功に恵まれなかったRTだが、本人は全然気にしていないそう。 「成功をどう定義付けるかだよな。成功することを、あらゆるダンスに出て、毎日毎日同じ曲をかけることっていうなら、それは俺向きじゃないね。 今流行ってるような大衆受けする曲はかけないんだ。俺はいつも皆とは違う選曲を心がけているんだ。 同じような曲をかけて、同じようなMCをしてるやつらが多いから、ダンスに行く度に同じようなものを聴くはめになるだろう?そんなのつまんないよな。 ジャマイカではそういうやつらを成功者と呼んでちやほやするけど、やつらが海外に行ったら2000人も集められないね。」 と、あくまで強気なRT。 そのRTが今、不満に思っていることとして、システムなしで曲をかける新しいタイプのセレクター、彼が呼ぶ「CDセレクター」を挙げた。
「俺はCDの詰まったちっちゃい箱を持ち歩いてダンスに行って金を稼いでるようなセレクターはリスペクトできないね。 やつらは大金をはたいて機材を買うことや、次の世代の若いやつらを雇って育てることの大切さを理解していないんだ。 時間をかけてチューニングをしたり、音がきっちり合ってることに気を遣ったり...。そういうことを分かってないんだな。 今の音楽業界は誇大宣伝ばかりなんだ。今のやつらは歴史を知らないね。グチっぽくなってしまうけど、とにかく音楽が好きだからつい熱くなっちまうんだ。 Danny Dread、Jah Screw、JaroのAinsley、RoadstarのIan、Stone LoveのRoryとか、このビジネスが立ち上がった当初のセレクターたちの果たした偉大な役割を今のやつらは知らないだろうよ。」 グチっぽいのはやはり年のせい?

Anyway, 彼は最近人気のあるマーチングバンド「Magnificent Troopers」にも情熱を注いでいる。彼らは多くの大会で勝利を収めているそうだ。 RTはこのバンドのことを自慢げにこう話したという。 「俺はあのバンドが3〜4人だけのメンバーでがんばっている状態から見てきた。今は100人もメンバーがいるんだ。鼻が高いよ。 人生で欲しいものはがんばれば手に入れることができるって教えてくれたね。俺の中には音楽に対する情熱が溢れてるんだ。 このバンドが成長して前進していくのを見ると、まだまだ希望はあるって思えるんだよ。」 少々グチっぽいところもあるけど、とにかく音楽が大好きなRT。今後も「Sound Trooper」での彼の活躍に期待したい。

*RTはまだ若くてセレクターになる前、マーチングバンドに入っていたそうだ。 「Trooper」という名前はそのマーチングバンドの名称「Magnificent Troopers」からつけられたという。 その後「Kilimanjaro」に入るときにJunior Catが呼びやすい「Ricky」という名前をつけたらしい。
<2005.1.7〜><text:ca-spa>





→レゲエニュース バックナンバー目次へ戻る